少しずつ成績が伸びる生徒

塾に入って、すぐに成績が伸びる生徒もいますが、少しずつ少しずつ伸びていく生徒もいます。今回はそんな生徒の一人についてお話しします。長野で塾の講師をしていた時の話です。

Kさんは中学1年生の春から塾の授業に参加しました。大人を下からのぞく感じの、子供っぽさのある女の子でした。

その春、お姉さんが地元の進学校に合格していました。お姉さんは中3から塾に通い始め、順調に成績が伸び、希望していた地元の進学校に合格しました。お母さんによると「Kは姉より勉強が苦手なので早めに対策をと思いまして」とのことでした。

■最初のテストが50点

Kさんは小学校の計算があまり得意ではありませんでした。小テストの結果を見ると、割り算が大の苦手。引き算、足し算も危いところがありました。

また、生まれつき舌が短いようで、日本語の発音が得意ではなく、「らりるれろ」がうまく発音できません。「ダディドゥデド」になってしまいます。(小学校ではそれでいじめられたこともあるとのことでした。) そのため英語の発音練習がうまくできないという状況でした。

5月に行われた中学1年生の最初のテストは数学は40点、英語は50点ほどでした。

当時、8人のクラスでしたが、Kさんがクラスについていくのは大変でした。小テストを返されるのがいつも一番最後で、Kさんは小さくなっていました。「先生、小テストって毎回やらなきゃだめですか?」と言われました。「みんなにばかにされたくないんです!」とKさん。この言葉はKさんからその後何度も聞きました。これがKさんの原動力だったのかな、と思います。

■ばかにされたくない

Kさんは見込みがありました。授業は真面目に聞きますし、課題を出すと、それに応えてくれます。「教科書のこのページの単語、次の小テストだから練習してね。」と言うと、ちゃんと練習して覚えてくるのです。ノートに何回も練習してあるのを見せてくれました。

塾で課している「英語の教科書の暗唱」もしっかりやってくれました。お家でお姉さんが読み練習を手伝ってくれていたようです。

数学の小テストの間違い直しもやってありました。間違えたところをもう一度ノートにやる、お母さんと約束したようです。理解できないところは質問に来て解決していました。そのたびに私はKさんのノートを見る機会を得てその徹底ぶりに感心していました。

そういう、一つ一つのKさんの行動のおかげで、本当に少しずつですが、成績が上がっていきました。中学2年の2学期までには、英語のテストではほぼ80点以上取れるようになりました。

ですが、数学は60点どまりでした。計算が苦手なので、どうしてもミスが出てしまうのです。

■計算の苦手をなくしたい

余談ですが、計算が苦手な生徒は実は結構います。私は、その理由を「数字に対するイメージが不足している」せいだと思っています。Kさんは例えば「2+3=5」を暗記しているフシがありました。まるで漢字や英単語を暗記するように。ですから足し算が、引き算や掛け算のにつながっていきません。計算を間違えていることに気が付かないし、また、いつも計算間違いを恐れています。

Kさんの数字のイメージを広げるために、授業後にトランプで遊んだり、おはじきを使ったゲームをしたり、算数のクイズを出したりして遊びました。(ちなみに小学生のうちにこのような数字に対するイメージを広げてほしくて、10年前に能代で「算数クラブ」というクラスを立ち上げましたが、需要がなくやめざるをえませんでした。またいつかやりたいと思っています。)

■中3でようやく

中学3年生になったとき、驚いたことがありました。Kさんの英語の順位がぐんと伸びたのです。中3で長文の量が増えて、点数が大幅に下がってしまった生徒が数人出た中で、Kさんは点数がそれほど下がらなかったのです。学校内での順位もすごく良かったと、お母様も喜んでいました。私も1, 2年でコツコツ頑張ってきた成果が現れて、本当に嬉しかったです。

中3のときのKさんは、友達に英語を教えたりできるほどになっていました。高校も進学校に無事合格しました。

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