楽しい人間はいろんなことを楽しめる。何でも楽しめる人は、勉強も仕事も楽しめるかもしれません。
■つまらないのはつまらない人間だから
「つまらない!なんにもおもしろくない!楽しいことが一つもない!」と言って、元気に職員室に入ってくる女子生徒。私が大学生の頃にアルバイトしていた塾での光景です。そうやって講師の注意をひいて自分の話を聞いてもらうのです。
それに対して塾の社員である先輩講師はニッコリしてこんなことを言いました。「いろんなことがつまらないのは、君がつまらない人間だからだよ。楽しい人間はいろんなことを楽しめるものだよ。」
先輩講師の顔はにこやかでしたが私は「なかなかきついことを言うなぁ」と思っていました。と同時になるほどとも思えました。「楽しい人間はいろんなことを楽しめる。」その言葉が心に残っていてときどき思い出されるのです。
■楽しい人間とは?
おそらく、こういうことだと思いました。
「ものごとをおもしろがったり楽しんだりするためにはそれなりの知識や経験が必要である。知っている人や経験がある人はものごとを楽しめる。何も知らない、何もできない人は何もおもしろくない。」
■知識と経験
例えば、野球。野球を楽しめるのは野球のルールを知っているからです。知らない人は楽しめません。また、経験があればプレーのすばらしさが分かる。だから野球を楽しめるのです。学生時代に野球部に所属していた人は、その経験のおかげで、プロ野球のすごさ、高校野球の試合のおもしろさというのが一般の人よりたくさん感じられるわけです。
■知らないことは楽しめない
反対に知らないことは楽しむことができません。
例えば、能楽。ほとんどの人は能楽のことは知らないし、経験もないので、いきなり見ても楽しむことはできません。
大人になってから、京都の街を自転車で走ったことがあります。電車に自転車を載せて京都まで行く、いわゆる輪行というやつです。そのとき、京都がすごいところだということが本当によく分かりました。高校生の修学旅行で訪れたときは、CDがどこで買えるかとかTシャツがどこで買えるとかそういうことしか興味がありませんでした。今は素晴らしさがよく分かります。寺社仏閣はもちろん、京都の街のありかたがここにしかないという感じになっています。経験を積んで知識を得た大人だからこそ楽しめる場所なのですね。
■疑問を持つ
知識が多ければ多いほど、楽しめることが多くなる。それが、先輩講師が言いたかったことだと思うのです。「楽しい人間は、いろんなことを楽しめる。」
そして、知識ともう一つ、「疑問を持って眺める力」が楽しい人間の条件であると思います。
楽しい人間は、何でも楽しめます。本当に楽しんでいるように見えます。その人達は知識が多いことはもちろんなのですが、彼らは積極的に見て、疑問をもちます。そしてその答えを想像して楽しむのです。
楽しめないことの例として出した能楽ですが、楽しめる人はその能楽でさえも時間があれば興味を持って眺め、楽しめてしまうでしょう。
■勉強が楽しい人間をつくる
知識と経験。そして疑問を持って眺める力。この2つがあれば、いろんなことを楽しめる楽しい人間になれると思うのです。
勉強が楽しく感じられる人は、この2つがあるのではないでしょうか。
そして、知識と経験、疑問を持ってものごとを眺める力は勉強する過程でも身につけていくことができると思うのです。それまでの知識と経験を活用して、新しい問題に対する回答を考えるのです。勉強しているとその疑問が解決されていきます。解決されて納得する。「あー、そういうことだったのか!なるほど!」こう感じることが楽しさですよね。勉強を楽しんでやって、さらにいろんなことが楽しめる、楽しい人間が作られていくのではないでしょうか。
楽しい人たちは、仕事も楽しむことができるのではないでしょうか。なかなか難しいことだと思いますが、毎日の仕事をおもしろく、楽しく、充実してやっていくことができれば、それが一番幸せなことですよね。それは、学校で勉強することによっても育てられる力だと思うのです。
そして塾もそういう場になればいいなぁと考えています。