同じ授業を受けて同じくらい勉強をしているのに、成績に差が生まれてしまいます。なぜ差が生まれるのでしょうか。
今回の結論は「授業を聞いていないからだ」とか「家庭学習の時間が足りない」ではありません。真面目に勉強している生徒の間に差がつくのはなぜかということです。
◆成績が良い子は何が違うのか
例えば、花子さんも太郎君もとても熱心に授業を聞いているとします。家庭での勉強も十分しているし、塾にも通っています。それなのに花子さんは常に学年トップ。太郎君はトップクラスではあるけれど、花子さんにかなりの差をつけられてしまっている。考えたいのはこういうケースです。こういうこと、ありますよね。
もちろん、太郎さんが怠けているわけではありません。太郎さんも負けず嫌いで、学年トップをとりたいと思っています。そのために花子さんよりたくさん勉強していると自負しています。しかし、花子さんには勝てません。いったい二人の何が違うのでしょうか。
◆何でもできる
花子さんは、勉強だけではなく、部活動でも良い成績であることが多いです。しかもピアノがとても上手だったりします。決して勉強だけが得意というわけではないのです。中学校の文化祭を見に行くと、花子さんの絵がとても上手なのに驚く、ということもよくありました。そしてさらに花子さんの自由研究も張り出されていたりします。花子がゲームに夢中になっていることもあります。いったいどこにそんな時間があるのだろうかと感心します。
花子さんのような子はふつう「天才」とか「秀才」として認識されます。わたしが学生の時にも、花子さんのような同級生がいたものです。塾講師の経験が長いので、塾生にそんなタイプがいることも結構ありました。
そんな天才タイプの子は他の生徒と何が違うのかと考えるとある共通点が見えてきます。
◆成績が上がるのが目的ではない
花子さんタイプはテストの点数を上げるということよりも、数学とか、英語の「教科そのもの」に興味を持っている感じです。問題には正解しているのに、そこでは終わりません。「なぜこういう問題を出すことが可能なのですか」とか、「本当にこのやり方が一番いいやり方ですか」とかいう質問をします。
そして、教えられすぎるのを嫌います。自分で考えたがります。花子さんタイプは勝手に伸びていってしまいます。わたしは適切な問題を提供するだけです。
◆自分で観察して考える
花子タイプは、部活動でも自分なりに考えているものです。花子タイプのバスケ部のある生徒はあるとき嬉しそうに教えてくれました。「スリーポイントシュートが試合の勝敗を分けると気がついた!」と。
「スリーが入ると、チームに勢いがつきます。逆に相手にスリーを入れられるとチームから勢いがなくなる。だからスリーが入れば試合で勝てるんです!」
自分で見て考えてるんだな、と感心したものです。その生徒はそれからスリーポイントの練習をして、見事チームを地区優勝に導きました。
花子タイプは、あらゆることに真剣に取り組んでいるように見えます。「真剣に取り組む」とは「観察し、やってみて、考えて、またやってみる」ということです。勉強にしろ部活にしろ、絵画にしろゲームにしろ常に行われているのです。それがたくさんの経験になります。
◆一を聞いて十を知る
そしておそらくそれらの経験が、自分の中で結びついているのでしょう。塾で授業していても彼らは一回で理解してしまいます。一回の「観察」での見え方が普通の人とは違うのです。
ある塾講師の友達を思い出します。その友達もいわゆる花子タイプなのですが、例えば、一緒に同じ映画を見たときの見ているものの量がわたしとぜんぜん違うのです。彼が語る映画の批評を聞いていると「え、そんなシーンあったっけ?」となることが多いのです。後で一人で映画を2回、3回と見直して、彼の言ってることがやっと理解できる、ということがよくありました。
花子のこういう勉強以外のこのにも真剣に取り組んで得た経験が、勉強の成績を並外れたものにしているのではないか、と思うのです。
◆花子から学ぶ
わたしは花子タイプの人たちから大いに刺激を受けてきました。目の前のことをよく観察して、考え、やってみる。失敗することもたくさんありますが、それが充実するということなのだと思っています。
そして、塾の授業が、観察し、考え、やってみる、のきっかけになるように、工夫したいと思っています。